音楽のできかた(動機について) [Tips for DTM/作曲など]
思い入れもあるせいか、ポケモン(初代)の音楽がすごく好きで、たまに聴きます。
特にジムリーダー戦の曲がかっこいい。
何度も聴いていると、同じ音が二連続で鳴るところがなんか特徴的だなあ、と思う。
- 0:22~0:28 タタター(三音目は高い)という音の繰り返し
- 0:28~0:38 (タタッという音が後ろで鳴っている)
- 0:38~ 楽節の頭にタタターという音が入る。
うーん、字で書くとよくわからないのですが、まあフィーリングでなんとか。
どうやら、タタター(三音目は高く上がる)とその一部である同じ音をタタッと繰り返すことにかなり執着がある様子。でもあれ、これってどっかで…?
あー、オープニングテーマ(の前半)ですね!
そう考えると、ジムリーダーの方の冒頭0:02~0:12で鳴る タッ タッ ター …の音も、どうやらこれのバリエーションみたいに思える。同じ音が二音続いて、三音目が長くて低い/高い。
このタタターの「動機」は、チャンピオン戦でも使われていて、
- 0:03~0:14 三音目が甲高く鳴って緊張感の高さをアピール
- 0:29~0:33 (三音目が)低い→高い→低いと、新しい組み合わせ
ちょっと音型が変わってますが、チャンピオンロードや、進化のBGMにも含まれていますね。
――え、それがどうしたって?
申し訳程度の解説
音楽ってーのはいくつかの要素に分解できるわけです。その中で、音楽的に感じられる最小の単位*ってのが「動機(モチーフ)」です。
*音楽的に感じられる「最小の単位」っていうと、音符のことかなーとか思ったりするわけですが、ひとつの音符だけでは音楽には感じられないので(「あ」とか「い」とか、ひとつの音素だけでは文として感じられないのと同じです)、もう少し大きな要素で考える必要があります。そこで、音程の変化だとかリズムだとかによって、ある程度有機的に音符が結合している状態を最小の単位とするわけです。
メロディやフレーズなんてのもいくつかの動機に分解することができます。そこで、それらの動機をほかの部分で流用することによって、楽曲に統一感が出てくるわけです(もちろん、メロディやフレーズの単位で流用したりすることもあります)。
その辺はクラシックの作曲家がお得意で、ソナタ形式の曲などは主題(テーマ。その作品でもっとも重要なメロディ)を分解し、様々に展開させています。たとえば、バッハ大先生のこの曲なんかは、楽曲全体がひとつの主題とその動機の展開によってできている。
普通に繰り返すだけでなく、転回(上下逆)や逆行(前後逆)、拡大(音符の長さを伸ばす)などの処理を行っています。
このようにひとつの主題をどんどん発展させていく、っていうのが当時のひとつの方向性ではあったわけです。
また、特定の場面で特定の動機を用いることによって、何らかのイメージや意味みたいなものを付与させたりすることができたりします。
たとえば、先ほどのタタターの動機が使われているのを思い出してみると、
- オープニングテーマ
- vs. ジムリーダー
- ポケモンの進化
- チャンピオンロード
- vs. チャンピオン
どうやら非常に重要であり、かつ決定的な場面でよく使われているみたい。そういう場面のイメージが楽曲に練り込まれているわけです*(ちなみに、野生ポケモンとか普通のトレーナーとの戦いの曲にはこの動機は入っていないみたい)。
*オペラなどでは、ライトモチーフといって、特定の人物のことを示す短い主題や動機を入れたりするそうで、これもそれにあたるのかしら。
こうやって、様々な動機を色々形を変えて使うことで、一連の楽曲での統一感を演出するのに一役買っているということですね。
まあ、こういう音楽の作り方を意識して音楽を聴いてみると、また違った側面が見えてきて面白いのではないかと思います。
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